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薬の治療がまったく逆になってしまうのであろうか。
それはもちろんさまざまな研究が進歩しなければ、わからなかったということだけではい。 医局制度は相変わらずYの描いた「白い巨塔」の世界であることには、なんら変わりはない。

そんな状況で、本来、非常に公平で客観的であるはずの医学界では、主観的、感情的な評価が医者に下され、組織改革は進んでいない。 病気そのものは時代を経て変わるものではない。
しかし、治療の方法は変わることがある昔から行われていること、先輩の意見、さらには医学の教科書を信じないことには、医学は行えないからである。 ほかに治療方法がない、という場合、古くから行われている治療を続けるしかないのだ。
そこで「どうしてこんな効かない薬を使っているのか」という疑問を持つことは少ない。 だからいったん治療の方法が決まってしまうと、それに疑問を持って検討することが少なくなってしまう。
さらに前述したように、その治療方法を決めているのが学会であったり、権威者であったりすれば、それを覆すには非常に時間がかかり、数十年かかることは決して珍しいことではない。 ましてや、副作用と見られていたものが人間に有効な効き方をすることがわかるというふうに、従来の治療方法が覆るときには鋭い観察力も必要になる。
使用禁止の薬が、実はその病気には有効であったということを証明することは簡単なことではない。 そんな大きな治療の転換が、日本の医学会から発表されることは希であり、ほとんど不可能なのだ。
前述したように研究者の多くは組織と教授の下でかなり縛られた状況に置かれているからである。 日本の臨床研究を進歩させるなら、研究環境はもちろんだが、システムそのものを見直す必要があり、医者を管理する医局を解体して、自由に研究が行えるようにしない限り、医者が科学的な視点で自由に判断することはできない。

権威者の妨害や新しいものを積極的に認めるシステムが存在しなかったことが原因で、せっかく日本人の発想でありながら、日本では実用化できなかった医療機器がある。 いまでこそ数万円で買えるようになり、手術室では欠かせない医療機器となっている。
ハルスオキシメーターは、からだの表面から動脈血の酸素飽和度(ヘモグロビンと酸素の結合の度合い)を測定する装置である。 日本光電のAらにより発明されたが、実用化はアメリカでなされている。
卓越したアイデアを日本では生かし切れなかったのだ。 ハルスオキシメーターのアイデアがアメリカに渡り、アメリカで医療機器として承認され、手術中での装着が義務づけられるまでになって、日本でもその重要性に気が付くという状況だった。
医療器械というのは、従来の器械に比べてどれくらい優れているのかが、性急に判断されることが多いようだ。 そうした風潮のなかでは、なかなか新しい医療器械の存在が認められることはない。
私が大学にいるころ、大脳の表面の酸素濃度を測る器械を研究機材として導入して使ったことがあったが、ほとんど注目されなかった。 しかし、今はそれが進歩して脳の表面の酸素消費量を詳しく観察できる器械に発展している。
新しい器械の重要性を理解できるのは、若手の研究者であることが多いので、どうしても上司である教授がそれにブレーキをかけてしまう。 困ったことには、それが正しい判断と信じ切ってしまうのである。
権威者は自分が医学のために正しい判断をしていると、自分の非科学的判断(自分が見たことがないとか、従来と違うといった科学的でない判断)により、幻想を描いてしまう。 アインシュタインでさえ、量子力学の存在を最後まで認めず、大きな過ちをおかしているMつまりM(一八六二〜一九二二)は陸軍の軍医・として、脚気の原因は細菌にあると硬く信じて、慈恵会医科大学の初代学長となったT(一八四九〜一九二○)の脚気副ダミン欠乏説を、最後の最後まで否定し、陸軍の戦争による死者の数より、脚気による死者を多く出すという誤りをおかしている。
ある部分で優れた能力を持っているからこそ、新しい部分の知見、新しい技術を理解することが難しくなってしまう。 柔軟性のある脳を持ち続けることは、人間には不可能なのだろうか。
も書しそうだとすれば、医学における「権威者幅若手研究者」という構図は、数百年と続き、多くの妨げとなる権威があっても進化を続けてきたことは、じつに驚くべきことであり、人間の情熱のすばらしさといっていいのかもしれない。 医学を常に科学的な視点だけで、判断していく二とは不可能であることを歴史は証明している。

それができたなら、もっと急速な医学の発展が望めたであろう。 迷路のなかで試行錯誤を続けた結果がいまの医学の現状と言ってもいいだろう。
その試行錯誤や無駄があったからこそ、ユニークな医療機器などが出てきたのだ。 医学における検査、手術は常に新しい試みがなされてきたからこそ、医学が進歩してきた。
重要なことは、新しい試みを行うことだけでなく、それをきちんと評価できるシステムや組織を作ることであるが、その点においては海外からみれば、日本は非常に遅れている。 さらに新しい試みには、患者の同意というものが重要視されるようになり、医学の進歩が遅くなったとしても、患者中心の医療を進めていくべきだろう。
ただし多くの例外もある。 がんのように、ほかに治療法がない場合は、新しい技術や診断方法をより早く試みていく必要があるが、日本ではそういった新しいことをすばやく取り入れることが難しい。
厚生労働省の承認がなければ、新しい治療薬や治療法を導入できない。 アメリカやヨーロッパで何年も前から使われている薬、検査、手術であったとしても、すぐにそのまま日本で使用できないのが現状である。
少なくとも先進国の医療における、新薬や治療法の承認は日本より厳しいはずであるのに、そのデータは無視され、日本で同じような臨床的な試験をしなければいけない。 新薬の承認、大学病院の医療のシステムの古さなどにより、すばやい対応ができないのが日本の医療である。
新しい医療技術の科学的な妥当性について、いまやインターネットを通じて患者も情報を得ることが可能となってきたにもかかわらず、その実際の技術を導入するにはあまりに時間がかかり、それによって実際に失われる命もある。 科学では真実がひとつであるはずである。
もちろん人種の差があるので、海外での新薬のデータをそのまま輸入はできないかもしれないが、インターネットの同時性を優先させ、情報の共有が可能となってきたのであるから、新しい医療の導入方法を考えるべきである医療システムの障壁によって、最先端医学の恩恵を受けられないとすれば、実に悲しいことではないか。 グリーンランドなどの氷床の年層酸素同位体比分析によって、地球の温暖化などが指摘つまり、温暖化は地球規模の現象であると信じられていたが、実はもっと局地的な変化が起きていて、世界同時に気候変化が起きていないことがわかってきた。

医学でも同じことが言える。 外国での大規模調査がまるで正義のように展開されてきた。
大学病院どうしの学閥の争い、学会どうしの争いがあり、なかなか日本規模での医学調査ができずにきた。

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